CALENDAR
S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
31      
<< March 2024 >>
ARCHIVES
CATEGORIES
MOBILE
qrcode
内と外

 




夜の雨戸を押し上げて

凍えた朝を迎え入れる

部屋に放った兎が一羽

小首ふりふり走り出て

グーグーグーと

何重にも不規則な弧を描く

足にまとわりつくグーグーを押しとどめ

食餌の野菜をそこに置き

その温かい耳の付け根を優しく摩る



そういえば

窓から見える神社のそばの樹上の巣

雪の日以来、主の姿を見ていない



 



| 詩作 | 15:49 | comments(0) | - | pookmark |
寒中熊

 



私の喉の奥のほうには湿った壁があり

この冬どんよりとした穴があきました

そこを乾いた冷たい風が出たり入ったりするものだから

中に住む熊は不機嫌です

里まで下りてきては藪ででんぐり返りをし

やけっぱちに畑を荒らし

あげくに野良犬と喧嘩までしたりして…

まーまー、そうやけをおこさずに

そういって穴に帰ってきた熊の背をさすり

お湯をわかしてお茶をいれ

蜜柑も出しました

早くこの穴が塞がればいいのにね

まだ興奮して肩で息をしている熊を哀れに思い

もう風が吹かないようにと喉をさすり

部屋の灯りを消して

布団にもぐりました



 

| 詩作 | 00:43 | comments(0) | - | pookmark |
師走

 




河に架かる鉄橋を渡るたび

銀の鱗を纏った水面を車窓いっぱいに浴びて

とても目を開けていられない

厚い雲のフィルターを通して

精製された真っすぐな光が目に刺さる

網棚の鞄をそのままに

つり革にぶら下がった体を残し

誰にも気づかれないうちに

このまま雲の繭のなかで盲いて

ただ冬の純白を紡ぎだしたいと思った


 




ネットショップ『版画の森』
iichi - HandMade in Japan
| 詩作 | 09:41 | comments(0) | - | pookmark |
7月

 



ここ数年

本格的な夏の始まる頃に個展が終わる

慌しい月ではあるけれど

縁日で膨らんだ 綿飴の袋のよう

空っぽでパンパン

ご褒美みたいに

ふわふわふわ


 

| 詩作 | 21:51 | comments(6) | - | pookmark |
ある朝

 




洗面台で歯を磨いていたところ

ブラシから鏡に飛んだので

拭き取っていたら

背後から父が現れ


鏡を磨いてもキレイにはならんぞ

はっはっはっ

といった




 

| 詩作 | 23:58 | comments(2) | - | pookmark |
入梅

 




雨音を羽織った灰色の朝

狭く開いた窓から雨の音と匂いが忍び込み

スピーカーから流れるピアノとよく混ざる


昼は街が発熱し

降ることに飽きたようにしばらくやむ


雨で気配の消える夜

どこかで仔猫の声が雨と夜と混ざり

いつまでも鳴き降り続くので哀しい


 

| 詩作 | 23:59 | comments(0) | - | pookmark |
金曜日の夜

 




国会議事堂前にいた

でも信号を渡って向こう岸にはいけなかった

急に夜が怖くなってしまったみたいに

ただ警察車両の間から群集の列をみつめて

もっとお祭りみたいになればいいのにと願った

大きなお祭りが二つも三つも集まったような

道幅を全部人で埋め尽くすくらいの

盛大な行進になればいいのにと


 



| 詩作 | 23:53 | comments(0) | - | pookmark |
号泣

 




午後はどこかで雨が降りますと朝から聞いていたから

書店を出て空がますます暗くなっているのを見て

やっぱりなと思い地下鉄に駆け込んだ

やがて電車は地下から地上へと走り出し

空をわけて雨雲が迫っているのが見えた

それでも電車は必死に東へ走る

車内放送があり

竜巻注意報が出たので

速度を落として走りますという

駅に降り立つと

空はもう号泣する寸前

傘なんか持ってない

こんな空を予想しても

傘の必要なんてこれっぽっちも感じない



 

| 詩作 | 23:58 | comments(0) | - | pookmark |
わたしの代わりに

 




わたしの代わりに

机の下に寝転がり

日暮れまで夢をみて

指の先からゆっくりと

つま先まで伸びをする

夕食は散らかし放題

満腹でやがてまた眠りこむ



夜遅く

机の下に手を翳す

撫でられることしか知らぬかのように

夢心地で頭を垂れる

今日は一日

詩を書いて過ごしました



 

| 詩作 | 23:57 | comments(2) | - | pookmark |
帰宅途中

 




空腹で

うっかり他人の家を

破壊した


夜風を撫でる

若葉のさざなみ聞きながら

蜘蛛の巣に

顔面から突っ込んだ



 

| 詩作 | 23:38 | comments(2) | - | pookmark |
| 1/3PAGES | >>